臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

 パンパン!

 健太は最初から上手く打てたようで、ミットから高い音が出た。

 飯島が感心しながら言った。

「片桐いいぞ! お前、いい加減に打つのは上手いな」

「先生、褒められてもあまり嬉しくないんスけど……」

「何言ってるんだ。俺は素直に褒めてんだよ。いい加減に打つってのは結構難しいからな」

「先生、それやっぱり褒めてないッスよ」

 健太はそう言いながらも、嬉しそうな顔でいい加減なパンチを繰り出していた。


 その後、有馬と白鳥のミット打ちが続く。

 有馬は健太程ではないが、二度目のワンツーストレートを打ってコツを掴み、ミット打ちが早く終わった。

 白鳥は飲み込みが悪く、誰よりも多くワンツーストレートを放ち、ようやくミットから高い音が出るようになった。

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