臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 四人のミット打ちが終わり、飯島が一年生達に言った。

「今のミット打ちは、『キレる』パンチを教える為にやったんだ。どうだ、分かったか?」


 沈黙していた四人だったが、健太が口を開く。

「『キレる』ってあまりピンとこないんですけど、さっき康平が言ったようにミットを弾く感じでいいんですか?」

「そうだなぁ……『キレる』と言うのは言葉では説明しにくいんだが、そう思って貰っていいぞ」


 有馬も質問に加わった。

「でも、今のミットの打ち方のままじゃ相手に効かないですよね」

「そりゃそうさ! 今は軽く打たせたし、拳も握らせていないからな」


 有馬に答えた飯島だったが、白鳥の冴えない表情に気付いたようだ。

「……ん? 白鳥、何か言いたそうだな」


 白鳥は、さっきのミット打ちが上手く出来なかったのもあってか沈んだ声で言った。

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