臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 飯島がそれを見て笑った。

「お前、何嬉しそうにしてんだよ?」

「そ、そんな事ないです。……ただ、俺の事をちゃんと考えてくれてんだって思うと、嬉しくなっちゃったんですよ」

「なんだよ、結局嬉しいんじゃないか」

「あ、そうですね」

 有馬は笑って頭を掻いた。


 最後に梅田が訊いた。

「有馬、お前は今、何を身に付けるか分かるか?」

「肩の回転を生かした強い左ジャブを打つ事です」

「相手にカウンターを狙われてても徹底しろ。……ジャブが当たったらどうするんだ?」

「右左右のストレートで追撃します」

「相手が左ジャブにカウンターを打ってきたら?」

「確か今は右グローブで防ぐんですよね?」

「そうだ。今の段階ではな。分かったならトットと帰れ。……俺と飯島先生は、お前だけを相手をしている訳にはいかないんだからな」

 そう言って梅田は視線を変えた。

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