臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「先生。さっきの質問にまだ答えて貰っていないんですが……」

「ん、何の話だっけ?」

「ほら先生、さっきのミットで打った打ち方じゃ効かないって話ですよ」

「あぁそうだった。あの話は中途半端になってたっけな。……話を戻すが、さっきのミット打ちでは効かないって事は、みんな聞いてたんだよな」

「はい。拳も握ってなかったですしね」

「まぁ『キレる』パンチの感覚を教えたかったからな。っで、効くパンチにする為には当たる瞬間に拳を握るんだが、さっきのミット打ちでやったように、腕の力を抜いて拳を投げる感覚で打つんだよ。ストレートに関してだけどな」


 飯島の話を聞いていた四人だったが、康平が質問をした。

「先生。拳を投げる事は分かったんですが、軽く打つ感じでも効くんですか?」

 他の三人も同じ事を訊きたかったようで、小さく頷いている。


「軽く打ってたら効かないさ。だが、腕の力をは抜かなければならない。……そこでだ、ストレートで威力を出すのはここだ!」

 飯島はそう言って見本を示す。

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