臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「うちのキャプテンは、スゲェいい人でさ。減量がキツイんだけど、俺の為にライト級(六十キロ以下)まで落とすんだぜ」

「裕也の為にライト級?」

 康平は首を傾げる。


「ほら、お前んところには相沢さんがいるだろ? 三年が抜けたライト級じゃ優勝候補だからさ。国体予選じゃ、決勝までいったしな。俺はライトウェルター級(六十四キロ以下)で出るんだけど、あそこは飛び抜けて強い奴はいないからさ」

「そうか。……けど、それだったら後輩の裕也が減量するんじゃねぇの?」

「本当はな。今回は事情があってそうなったけど、……まぁ、新人戦が終わったら話すよ」

 裕也は、そう言って康平達と別れた。

 彼について行こうとした那奈だったが、別れ際に三人へ言った。

「裕也は、最近ボクシングの事ばかり話すのよねぇ。好きなのは分かるんだけど……。機会があったらまた一緒に勉強しようね」

 那奈は、小さく手を振りながら裕也の後を追い掛けていった。

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