臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 康平達もそれぞれ家へ帰っていく。


 夜の十時頃、康平の家で電話が鳴っていた。

 気付いた康平が受話器を取ると、亜樹の声だった。

【今日はお疲れ様! 数学教えられなかったね】

【いいよ別に。お願いした訳でもないしさ】

【あらぁ、最初机に数学を出してたのは、私に教わる為だったんじゃないの?】

【ま、まぁな】

【頑張ってよ! 君の成績アップは私も期待してんだからね】

【携帯は欲しいから言われなくても頑張るけど、何で亜樹が期待すんの?】

 康平が訊くと、亜樹は間をあけて言った。

【早く君に携帯を持って欲しいのよ。康平んちに電話するのは、私だって緊張すんだからね】

【あぁ、そうだよな。……ところで用事ってそれだけ?】

【え、えっとねぇ……弥生ちゃんは本気でボクシングをやりたがっていたけど、先生にちゃんと訊いといてあげてね】

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