臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
怯んだ有馬が少し後ろに下がった。
「ビビるんじゃねぇぞ! 構わずジャブを出すんだよ」
再び梅田が怒鳴った。
その声に反応した有馬は、再びジャブを繰り出す。
だが、そのパンチは大崎が頭の位置を変えた為、虚しく空を切った。
身長が百六十五センチの大崎に対して、六センチ程高い有馬は盛んに左ジャブを打ったが、全て外された。
逆に大崎の左ジャブが、度々有馬の顔面にヒットしていった。
夏休みに大学生の山本とスパーリングをした有馬だったが、その時は相手が明らかに手を抜いていた。
山本は、有馬のブロックの上をわざと打っていたのだが、大崎は有馬の顔面を狙ってパンチを放っていく。
相手が打ってくるプレッシャーのせいか、有馬はガチガチに力んだ状態になっていた。