臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「こ、高校でボクシング部に入ってて、今シャドーボクシングをしてたんだよ」
「……ふーん」
弥生は笑う様子もなく、真面目な顔で聞いている。
「あれ、笑わねぇのかよ? お前から見たら、ヘタレの俺がボクシングやってんだぜ」
「……私も空手やってるけどさぁ、こればっかりは分かんないんだよねぇ。おっとりしてるコが案外勇敢だったりするしね」
「あ、それ分かるよ。先輩にもそういう人がいるしな」
「……康平ちゃん高校どこだっけ?」
「永山だよ」
「そこのボクシング部って強いの?」
「弱くはないと思うぜ。今年は全国二位が二人もいるしな」
康平は照れ臭かったのか、鼻の下を指で擦りながら話す。
「何も康平ちゃんが強いって訳じゃないでしょ! 何勝ち誇ってんのよ」
ドゴ!
弥生の中段突きが康平のみぞおちに入った。
「ゲホゲホ……お前会話の最中に、暴力を混ぜるのは勘弁してくれよ」