臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「何でですか? 返し技を狙えば反撃出来るし、もっと上手く戦えるんじゃないんですか」

 有馬が反発するように言い返す。


「有馬、お前まだ動けるか?」

 梅田は怒る様子でも無く有馬に訊いた。

「はい」

「だったらグローブを付けてリングへ上がれ。グローブは十オンスでいいぞ」

 梅田は頷く有馬を見て、自身もサングラスを外してグローブを嵌めている。


 リングへ入った有馬に梅田が言った。

「一ラウンドだけマスボクシングをするぞ。簡単に言えば寸止めの実戦練習だ。……有馬はドンドン返し技を狙ってみろ」


 全員の練習が終わっていた為、タイマーは電源がオフになっていた。飯島が気付き、電源を入れて二分間に設定する。


「梅田先生、始めますよ」

 飯島はそう言ってタイマーをスタートさせた。

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