臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
スパーリングで善戦した健太は上機嫌で答える。
「昨日はボクシングのDVDをずっと見てたんだ」
「ボクシングのDVDって、レンタルであったっけ?」
「ちげーよ! 俺さぁ、六月頃からプロの世界タイトルマッチは全部録画してんだぜ」
照れ臭いのか、健太は左の人指し指で鼻の下を擦った。彼は話を続けた。
「そんでさぁ、俺が好きなアレの試合を何回も見てたんだよ」
「アレって、サウスポーで左ボディー打ちが得意なチャンピオンか?」
「そうそう、前の防衛戦はそのパンチで試合を終わらせてたしな。……今日のスパーは外れてもいいから、アレが打つ左ボディー打ちを必ず一発は打つって決めてたんだよ」
三週間程前から、健太はサウスポーからの左ボディーブローを習っていた。
第二体育館でミット打ちした際、健太がそのパンチを打つと快音が体育館中に響き渡り、隣で練習している女子バスケ部員も彼に注目している時があった。
康平は、その音を聞く度に戦慄が走っていた。自分が将来健太とスパーリングした時、あのパンチを食らうのかと思ったからだ。
「昨日はボクシングのDVDをずっと見てたんだ」
「ボクシングのDVDって、レンタルであったっけ?」
「ちげーよ! 俺さぁ、六月頃からプロの世界タイトルマッチは全部録画してんだぜ」
照れ臭いのか、健太は左の人指し指で鼻の下を擦った。彼は話を続けた。
「そんでさぁ、俺が好きなアレの試合を何回も見てたんだよ」
「アレって、サウスポーで左ボディー打ちが得意なチャンピオンか?」
「そうそう、前の防衛戦はそのパンチで試合を終わらせてたしな。……今日のスパーは外れてもいいから、アレが打つ左ボディー打ちを必ず一発は打つって決めてたんだよ」
三週間程前から、健太はサウスポーからの左ボディーブローを習っていた。
第二体育館でミット打ちした際、健太がそのパンチを打つと快音が体育館中に響き渡り、隣で練習している女子バスケ部員も彼に注目している時があった。
康平は、その音を聞く度に戦慄が走っていた。自分が将来健太とスパーリングした時、あのパンチを食らうのかと思ったからだ。