コイツ、俺の嫁だから。【おまけも完結】
「那央!? すごい、間に合うと思わなかったー!」


部屋のドアを開けた俺を待っていたのは、ベッドに横になっているものの、意外と普通な縁だった。

……あ、あれ? 想像していた状況とまったく違う。

縁のそばには彼女のお母さんが付き添っていて、「立ち会えてよかったわねぇ」なんて言っている。


「な、なんか……意外と普通、だな」

「うん、今は痛くない時。本当に痛さに波があるんだよ」


息を切らしながらぽかんとする俺に、縁はケラケラと笑いながらそう言った。

そ、そういうもんなのか……。

一気に脱力したものの、とりあえず元気な姿を見れてホッとしたのだった。


……しかし、わかってはいたが、出産がそんなに簡単にいくわけがない。

どんどん痛む感覚が短くなって、縁は笑顔を作ることも出来なくなって。

苦しそうに耐える姿は、本当に見ているのも辛いくらいだった。


俺に出来ることなんて、汗だくの彼女をうちわで扇いだり、手を握ることくらいしかない。

それでも、分娩室に入ってその時を迎えるまで、俺はただただふたりの無事を願った。

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