コイツ、俺の嫁だから。【おまけも完結】
タクシーで官舎に帰ったのは午後十一時半。たいして酔っていないから、足取りもいたって普通だ。
ふたりを起こさないように静かに玄関に上がると、リビングからの明かりが漏れていることがわかる。
泥棒みたいにそっとリビングに近付き、ドアを開けた。
「あれ……」
ソファーに座って、何も掛けずに眠っている縁がいる。
テレビはごく小さな音量でつけられたままで、テーブルの上には飲みかけのハーブティーが置かれていた。
もしかして、俺のことを待ってたのか?
開けたままの、リビングから繋がる寝室を覗くと、ベビーベッドでゆながすやすやと寝息を立てている。
ものすごく可愛い天使のような寝顔に、自然と笑みがこぼれるけど、すぐに縁のそばに向かう。
「縁……風邪ひくぞ」
小声で囁き、頬にかかる髪をそっと掻き上げた瞬間、ぱちっと瞼が開いた。
「やっば、寝ちゃっ……! ……あ、あれ、那央?」
すげー早さで起きたことに俺も驚きつつ、しーと人差し指を口に当てると、縁ははっとして寝室の方を見やる。
ゆなが起きないことを確認すると、俺に目線を戻してふわりと微笑んだ。