きみの声を聞かせて
「ちょっと~!なんで何にも喋らないのよ~!
本当にどうかした?」
最初は暢気な顔していたのに、みるみる心配そうな顔に変わっていった。
“お母さん”
とわたしはいつも話すような感じで呼んでみた。
でも自分の声は全然耳に入って来ない。
お母さんは目を大きく見開いて、「もしかして……」と声を漏らした。
“わたし……しゃべれなくなっちゃった……”
ゆっくり口を動かして伝えると、お母さんはそれを感じ取ってくれた。
「夏帆っ!」
大きな声でわたしの名前を呼んで抱き締めるお母さんはビクビクと震えていた。