きみの声を聞かせて
2学期最終日。
終業式と部活を終えて、いつものように翔矢くんに送ってもらって帰ってきて
ガチャっとドアを開けると、その音を聞き付けてお母さんが『おかえりー!』と言って玄関まで来てくれるのに今日は来てくれない。
どうしたんだろ。近所のおばさんの家に行ってるとか?
わたしはそんな呑気な気持ちでローファーを脱いでリビングに向かうと……
お母さんは椅子に座りながら、頬杖をついて俯いていた。
背中を向けて座るお母さんは未だにわたしの存在に気付いていないのか振り返ってくれない。
わたしはお母さんのそばに行こうと足を踏み出した時……
「夏帆はいつになったら喋れるようになるのよ。
本当は喋れるんでしょ。
いつまでそんな弱い子のふりなんてしてるのよ」
お母さんはそう言うと、わたしの方に振り返った。