君とお絵かき
「んぁ────·········。」
ここ、どこぉー?
白い、上も、下も、白いぃ。
ここってぇ──────
「病院っ!?」
蓮はガバッと飛び起きた。
(ん·········?)
何だか随分長い夢を見ていた気がする。
「変なの───?」
病院に行くのは一週間後だった気がするのに。
手術────────。
「はあぁあぁぁあ───っ。」
蓮は大きく溜息をつく。
すると、どこか見覚えのある医者が入ってきた。
「おや、お目覚めかな。」
────この医者、私が事故にあった時の医者だ。
「ぇ·········。」
やっぱり、もう決めなきゃいけないのだろうか───────
──────受けるか、受けないか。
怖い。手を無くすの。
でも─────────
「私、受けます······。」
────莉桜とまた絵を書きたいの·····っ!
「ん?何をだい?」
──は?
医者から返ってきたのは予想外の言葉だった。
「え、だから、手術です。」
何をだい? じゃないよ。
それを決めに、ここに連れてこられたんだろう。
「······そうかぁ。」
何なのだ。人が決めた選択にいちゃもん付ける気かこの医者は。
「な、何ですか。」
「私は、君に手術を受けて欲しいんだな。」
「はぁ·······。」
だから、受けるって言ってるじゃないか
「手を無くすの、怖くないのかい?」
「·········怖いですよ、そりゃあ。」
「じゃあ、何でこの手術、受けようと思うのかい?」
「私は、まだ、絵を書いていたいんです。」
「生き甲斐を、絵を書くことを失うのは·········。」
───手を失うのよりも怖いんです。
「·······そうか、よほど、絵を書くのが好きなのだな。よし分かった。」
「え······?」
「君の手は、この私が最善を尽し治す。その代わり、治ったら君の絵を私に見せてくれよ。」
「は、はいっ!!」
あぁ、治るんだ。
また、絵を書けるようになるんだ·······!
「だから、君は手術の時まで大事な友達と過ごすといいな。」
「えっ·········。」
医者が指を指す方向を見ると、莉桜がいた。
「莉桜·········?」
「もうっ、心配したよ、蓮ちゃん!」
「い、今の話全部聞いて────」
慌てて問いかけると莉桜は少し寂しそうな顔───────からすぐに笑顔になった。
「私に隠し事するなんて、蓮ちゃんらしくないよっ!手術、頑張ってね!」
「やっぱり、聞いてたんだ·········。」
「私、蓮ちゃんの事は何でも知ってるんだからっ!」
「ふふ、じゃあ私はこれで失礼するよ。」
そう言って医者は部屋から出ていった。