蓮月~ハヅキ~

「え?綺麗な名前だと思うよ」


過去の記憶を思い起こしていた時、ふいに聞こえてきたその声に顔を向ければ、ニコニコ笑っている真鶴ちゃん



「だって、あたしの名前も変だよ?それに比べれば“藤”なんて素敵すぎる名前じゃん」


やんなっちゃうー、と言う彼女に昔のあの子を重ねる


唯一、唯一僕の名前を笑わずに素敵だと言ってくれた子


そして、もう二度と会えない子


「それにね、藤って“恋に酔う”とか、“至福の時”っていう素敵な花言葉があるんだよ」


と、少し自慢げに言う真鶴ちゃん



「…ありがとう」


口から零れたのは感謝の言葉


自分でも驚いたけど、不思議な程すっきりした



「うえ!?お礼言われる様な事は何もしてないよ!」

「ううん、僕が言いたかっただけー」



そう言い空を眺める













僕の名前を笑わずに素敵だと言ってくれたあの子はもう居ないけど



彼女に出会って、また自分の名前を好きになった
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