蓮月～ハヅキ～

｢な、何かな…？あ、もしかして名前間違えてたとか？｣




不思議に思い、そう尋ねたら首を振られた。
デスヨネー。多分あたしが噛んだからだよね、うん。




｢いや…なんで名前知ってるのかなって。｣



違った…だと！？
でも、そりゃいきなり知らない人に自分の名前言われたら驚くわな。




てか、今さらだけど…この人めっちゃ顔整ってるぅ！
京香が発狂しそうなレベルだ、これは。





サラサラの(あたしよりきっと綺麗)黒髪に、切れ長の吸い込まれそうな目。
鼻筋も通ってて、どっから見てもイケメン。





それに加えて声までいいとか…凄いを通り越してムカついてきたわ。




あれだよ、何でも出来る人に対するひがみってやつだよ。




｢あー…あたしの隣の席だったから、名前チェックしてたんだ！｣




あたしがそう言うと、ほんの少しだけ






―――彼が悲しそうな顔をした気がした。



多分…いや、絶対あたしの見間違えなんだろうけど…そんな顔をさせるような事言ってないし。




でも…その時の悲しそうな微笑みが、あたしの頭の中のﾞ何か″と重なった。




そして、何故か彼の笑顔が酷く懐かしい気がした。



初めて会った筈なのに、あたしは彼を誰と重ねてるんだろう…。





それから、入学式が終わり京香が迎えに来るまで、ずっと答えの出ない疑問を考えていた。





そんなあたしを、宮本くんが見てた――ような気がした。