愛しています
いつもの朝。

「花野さん、おはよ」

今日も相変わらず、一ノ瀬君は私に爽やかな挨拶をする。

「一ノ瀬君…」
「昨日、あれから迷ったんだ」
「え??」
「部活行こうか行かないか。けど、結局花野さんの言う通り行ったよ」
「ほんと??」
「うん。なんかね、良くわかんないけどみんなやる気に溢れててさ、楽しかったし皆、前みたいに笑ってた」
「そっかっ、良かったねっ!!」
「花野さんのおかげだよ。北見君が言ってたみたいにさ、このまま逃げてたらきっと、この変わりように気づかなかったんじゃないかな」
「いいんだよ、私は」
「あのさ、今度お礼させて??」
「そんなっ、」
「それからさ」

一ノ瀬君は爽やかに微笑む。

本当、普通にかっこいいな。

そして私にこう言った。

「今日から歩ちゃんって言わせてもらうね」

と。

放課後。

今日は凌君が会議。

その間に私はサッカー部を拝見させてもらうことにした。

なんだかグラウンドがいつもと雰囲気が違うようにみえた。

「あっ、先生っ」

ふと無意識に声が出る私。

先生はこちらをパッと振り返る。

グラウンドの近くの木の日影に立ってサッカー部を密かに見ていたの、図書室の先生だった。

「あ、あなた…」

きっと私の名前なんか、分かんないだろう。

「こんにちは…あの、やっぱりサッカー部
を??」
「ええ、おっしゃる通りです」

図書室の先生は言葉遣いが綺麗だなと思った。

「そうですか」
「最近、図書室の方にものすごい声達が聞こえてきたので近くに見に行ってみたの。何事だろうと思ってね」
「そうだったんですか??」
「なんかあったのかしら。すごいやる気を感じるわ」

私はサッカー部を見る。

「そこ!!パスじゃない、ドリブルだ!!」

そう、顧問の先生の声までこっちに聞こえた。

あれ、顧問の先生…。

部活、来るようになったんだ。

「変わったみたいね」
「…」

もしかしたら、全部全部、凌君のおかげかな。

「また、一年前のように戻るといいわ」

先生はそう言ってサッカー部を見つめる

「そうですね」

私の見た先には、確かに一ノ瀬君がいた
< 11 / 36 >

この作品をシェア

pagetop