愛しています
ガチャ

ゆっくりとドアを開ける。

「…歩…」
「…優しくなんか、しないでよ…」

私は涙を拭いながら呟く。

涙で凌君の表情は分かんない。

「優しくすんの、当たり前だろ…??」

その声、やめてよね。

「凌君が優しくするから、だからっ、」

もう、頭の中がぐちゃぐちゃで。

「…ごめんな」

凌君はそう言って私の頭を撫でる。

「ひっ、凌君の事、好きになることもなかったのに…っ」
「…歩??」

凌君の動きが止まる。

「…ごめん、ね。ずっと、言えなくって…辛くなったから…」
「…そっか」
「…でも凌君を失いたくなかった…凌君、私のこと嫌いになったよね…私もう…ついに一人ぼっちになっちゃった…へへ」
「なるわけねーじゃん」
「へ??」
「そんなんでなってたらここまでこれねーよ」
「ほん、と??」
「あぁ。本当だよ」

…そっか。

「でも、俺は歩を幸せになんか出来ない…ごめんな」
「そうだよね…ごめんね…」
「ありがとう。俺、これから頑張るよ。ちゃんと医者継げるようにもっと勉強する」
「…あまり無理しないでね…」
「あぁ」
「歩、あのさ」
「ん??」

私は笑って返事をした。

「しばらくは無理かもだけど、また…あの頃みたいに一緒に帰りたい」
「え、でも…」
「陽菜の事??」
「…」
「元々一緒になんか帰ってないよ」
「え??」

じゃあなんで前…。

「あいつさ」
「…」
「小説書いてるんだよね」
「小説??」
「そう。だからただの実験台。それ以外には何もないよ」
「どういう事??」

実験台??

よく意味が分からない。

「なんて言うんだろ。試してみたい、みたいな??」
「じゃあ凌君は試されてるの!!??」
「まあそんなとこ」

なんでまた。

「まあ陽菜には生徒会のやつ助けてもらったんだよ、たまたま。それでまえ問題になってた件も解決した。正直自分で気づかなかったのが悔しいって言うか。それでまぁ、陽菜に今は従ってるって感じなんだよ。それも一ヶ月もさー」

そうだったんだ。

それだけなんだ。

なんだ。

少し安心する私。

「そっか」

私に再び笑顔が出た。

さっきまでのが嘘みたいに。

曇っていた顔がこの言葉で晴れた。

「てな訳。あと一週間ちょっとの辛抱か…長いな」
「てかなんで一ヶ月??」
「さあな。俺にもそれは分かんね。けどまぁ、解決してくれたしな。それくらいしてあげないと釣り合わないかな」
「そうなんだ。解決してよかったね」
「はは、まあーな」

凌君は照れくさそうに、だけど笑ってそう言った。
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