愛しています
『一ノ瀬君はね、一年前に優勝出来なかったインターナショナルにもう一度出て優勝するのが夢なんだって』

夢、か…。

私には夢とかまだ…

RRRRR

電話が鳴る。

「…はい」
『終わった。今どこ』
「えっとー」

グラウンド、って言ったらなんでってなるよね。

『外??』
「えっ、な、なんで分かるのっ」
『サッカー部丸聞こえ』
「え、あ、そうなんだ…」
『まあ今から来るわ』
「うん」

それからすぐに凌君は来た。

「よっ」

後ろからやって来たのは凌君だった。

それに、いちごオレを私の頭に乗せる。

「お疲れ様」
「それやるよ」
「いいの??」
「待っててくれたお礼だし」
「ありがと」

凌君から何かをもらうなんて滅多にないこと。

「で、なんでグラウンド??」
「え、ちょっと気になってね」
「おいおいなんだよ歩ー」
「え??」

そう言って、ニヤけながら凌君は自分の肩を押し付けてくる。

「気になんやつがいるのかー??サッカー部か」
「そんなわけないじゃんっ」
「俺には言っていいんだぜ??」
「だから、違うんだってばー」

気になる人もなにも、私好きな人いるし。

「ふーん、じゃあ何見てんの??」
「ううん、あのさ勿論凌君は一年前のサッカー部のこと知ってるよね」
「一年前のサッカー部??最強チームって呼ばれてた時代??」
「うん」
「知ってるけど…。それがどうした??」
「今日ね、凌君が会議の時図書室に行ったの。でね、先生とお話してね」

グラウンドの前の靴箱に二人横に並んで座る。

サッカー部は特に普通だった。

「歩が??」
「そうだよっ」
「そっか。良かったな」
「うん、それでね。サッカー部の事について語られたの。一年前のサッカー部が今ではガラッと変わっちゃったんだって」
「そうなん??」
「うん。ほら、一ノ瀬君いるじゃん??」
「あいつがどうしたんだよ」
「なんかね、また一年前みたいにサッカーしたいんだって。だけど今のままじゃ大好きなサッカーが出来ないんだって。凌君、どうにかならないかな…」
「顧問は??」
「顧問の先生は…知らない」
「ちょっと待てよ」
「うん??」

凌君は大きなファイルを開く。

あ、きっとこれ私は見ちゃいけないやつだ。

生徒会長さんだけが持っているというやつ。

学校情報というか、学校の構成というか。

とにかくまあ、私は見ちゃいけない。

だから逆の方向をわざと私は見た。

「ってかさ、昨日のテレビ見た??」

そんな声が、サッカー部から聞こえてきた。

今は二人ずつに別れてパス練習をしているはずなのに。

「ああ!!あれめっちゃやべぇ!!」
「ははっ!!だよなだよな!!」
「つか、一ノ瀬今日来てなくね??」

ある人の声が聞こえた。

確かにその人は、一ノ瀬君と言った。

「休みじゃねーの??あいつ最近サボり気味だろ」
「マジで!!??でもまあ、あいつがいないと楽だしな。自由でいいわー、それにいつも練習試合の時あいつがエースだもんな。いなかったら俺じゃん??」

…。

「歩??」

…。

「へっ、へえっ!!??」

いきなり凌君が顔を近づけてくるから、びっくりした。

「すげえな、反応」
「う、うるさいっ」

反応しないわけ無いでしょ!!

こんなイケメンが顔の近くとか。

しかもこの人私の好きな人なんですけど。

「そんな怒んなくてもいいじゃんか。顧問分かったぞ」
「え、誰??」
「永松」

永松先生は体育の先生だ。

「あいつだもんな、何も言わねーだろ」
「そっか…」
「第一まず、部活にそんな顔ださねーみたいだしな」
「なにそれ…」
「んで、俺にどうしろと??」

凌君は上から見るような顔つきになる。

「サッカー部、どうしたらみんなちゃんとやる気を出してくれるかな」

あんな話してたんだもん。

きっと今のサッカー部は悪いよ。

「まずは顧問からじゃね??まぁ、どうしても助けてほしいなら??協力してやっても…」
「うんっ、じゃあ宜しくね」

私はそれだけ言って立ち上がった。

今まで凌君に頼んできて、一度だってそれが叶わなかったことはなかった。

必ず、変えてくれるんだ凌君が。

「へいへい分かったよー」
「ありがとね」
「まあ…なんとかしておくよ」

本当頼りになる。

先生たちの気持ちもわかる。

「じゃっ、解決したところで、帰りますかっ」
「まだ解決してね…」

私はそんな凌君の言葉をスルーし、凌君の手を引っ張る。

「はいはい」

凌君はそれでもなにも嫌々なんか言わず

呆れながらも笑ってた。

これから先も、ずっとこれが続けばいいのにな。
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