Wish ~あなたの願い事はなんですか?~
山本真佑。それが私の名前だと伯母さんが教えてくれた。
あのおばさんは正真正銘私の「伯母さん」で、お父さんの姉らしい。
教えてもらった事実をまとめると、こういうことだ。
私は両親と一緒に電車に乗っていたところその電車がカーブで脱線し、1両目と2両目はフェンスを越えてマンションに突っ込み大破。1両目に乗っていた私は奇跡的に生き残ってしまったらしい。
そして、事故の時の物理的ショックか精神的ダメージかが、私の脳から今までの記憶を全て消し去ってしまっていた。
精密検査で特に異常はなかったから、記憶能力は失っていないようだけど、記憶が戻るまでは不自由な暮らしを送ることになるだろう。
身体的な怪我は擦り傷や打撲だったので、退院は思ったより早かった。私が意識を失っていた期間に体はほぼ治っていたらしい。
東京に住んでいる伯母さんは私を引き取ると申し出てくれたけど、断った。ますます過去の私から遠ざかって、永遠に記憶が戻らないような気がしたから。
とりあえず、伯母さんは1週間仕事を休んで、手続きや付き添いをしてくれている。今日は一緒に高校に行くことになった。
「電話で先生に報告はしたんだけど、やっぱりちょっと不安だし。今日は授業は出ずに、まず何人かお友達に会いましょう。」
「分かりました。…伯母さん、色々気遣ってくれてありがとう。」
私が通っていたという学校の廊下を歩きながら、伯母さんは少し疲れたように微笑んだ。
「何言ってるの、大変なのは真佑ちゃんの方でしょ。私の出来ることなんて、こんなことだけよ。」
私たちが食堂へ行くと、授業時間にも関わらず3人の生徒がお菓子片手に談笑していた。私に気づいた女子生徒の顔がぱあっと花開くように明るくなる。
「真佑、こっちだよ!!」
ぶんぶんと手を振る女の子に少し戸惑いながら伯母さんを窺うと、小さく頷いて肩を押してくれた。私がおずおずと空いている席に座ると、私の友達、らしき人たちが自己紹介を始めた。
「私は平田美奈子。真佑の一番の親友でーすっ☆」
さっき声をかけてくれた女の子だ。ぱっちりした目にストレートの黒髪で外見は大人っぽいが、喋りながらポーズを入れてくるあたりとても可愛い。
こら抜け駆けしないのー、と美奈子の頭に軽くチョップして、短い髪をくるんとカールさせている女の子が私に向き直る。
「私、渡辺知佳。美奈子と変わらないくらい真佑とは親友。私のことはちーちゃんって呼んでね~。」
「最後はオレ、斎藤雄大。剣道部の主将やってるぜ。」
真佑はまじまじと雄大を見る。まさか男の子の友達が来るとは思っていなかった。運動部の割には細身の男の子だ。しかも…
「しゅ、主将?」
「おー、食いついた食いついた。雄大こう見えて強いんだからっ。」
「性格もいいから女子にモテるしね…。真佑とは学級委員つながりで、いつしかメンバーに入ってたかなぁ。真佑は人見知りだから雄大も最初は苦労してたみたいだけど?」
「苦労?」
あのおばさんは正真正銘私の「伯母さん」で、お父さんの姉らしい。
教えてもらった事実をまとめると、こういうことだ。
私は両親と一緒に電車に乗っていたところその電車がカーブで脱線し、1両目と2両目はフェンスを越えてマンションに突っ込み大破。1両目に乗っていた私は奇跡的に生き残ってしまったらしい。
そして、事故の時の物理的ショックか精神的ダメージかが、私の脳から今までの記憶を全て消し去ってしまっていた。
精密検査で特に異常はなかったから、記憶能力は失っていないようだけど、記憶が戻るまでは不自由な暮らしを送ることになるだろう。
身体的な怪我は擦り傷や打撲だったので、退院は思ったより早かった。私が意識を失っていた期間に体はほぼ治っていたらしい。
東京に住んでいる伯母さんは私を引き取ると申し出てくれたけど、断った。ますます過去の私から遠ざかって、永遠に記憶が戻らないような気がしたから。
とりあえず、伯母さんは1週間仕事を休んで、手続きや付き添いをしてくれている。今日は一緒に高校に行くことになった。
「電話で先生に報告はしたんだけど、やっぱりちょっと不安だし。今日は授業は出ずに、まず何人かお友達に会いましょう。」
「分かりました。…伯母さん、色々気遣ってくれてありがとう。」
私が通っていたという学校の廊下を歩きながら、伯母さんは少し疲れたように微笑んだ。
「何言ってるの、大変なのは真佑ちゃんの方でしょ。私の出来ることなんて、こんなことだけよ。」
私たちが食堂へ行くと、授業時間にも関わらず3人の生徒がお菓子片手に談笑していた。私に気づいた女子生徒の顔がぱあっと花開くように明るくなる。
「真佑、こっちだよ!!」
ぶんぶんと手を振る女の子に少し戸惑いながら伯母さんを窺うと、小さく頷いて肩を押してくれた。私がおずおずと空いている席に座ると、私の友達、らしき人たちが自己紹介を始めた。
「私は平田美奈子。真佑の一番の親友でーすっ☆」
さっき声をかけてくれた女の子だ。ぱっちりした目にストレートの黒髪で外見は大人っぽいが、喋りながらポーズを入れてくるあたりとても可愛い。
こら抜け駆けしないのー、と美奈子の頭に軽くチョップして、短い髪をくるんとカールさせている女の子が私に向き直る。
「私、渡辺知佳。美奈子と変わらないくらい真佑とは親友。私のことはちーちゃんって呼んでね~。」
「最後はオレ、斎藤雄大。剣道部の主将やってるぜ。」
真佑はまじまじと雄大を見る。まさか男の子の友達が来るとは思っていなかった。運動部の割には細身の男の子だ。しかも…
「しゅ、主将?」
「おー、食いついた食いついた。雄大こう見えて強いんだからっ。」
「性格もいいから女子にモテるしね…。真佑とは学級委員つながりで、いつしかメンバーに入ってたかなぁ。真佑は人見知りだから雄大も最初は苦労してたみたいだけど?」
「苦労?」