Kiss of a shock ~涙と~
プロローグ
幼い頃の事だ。


確か、10歳にもなっていなかった。


梅雨の頃だったかその日は、雨が降っていた。


降りしきる雨の中、直人は健二と向かい合い、無言のまま立ち尽くしている。


ふたりともずぶぬれであったが、そんなことはどうでも良かった。


はるか後方から祖父が駆けてくるのが分かった。


先に沈黙を破いたのは健二の方だった。


「結局、良いところは全部、お前が持っていくんだ。」


雨ではない、溢れる涙を頬に伝わせる。
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