Kiss of a shock ~涙と~
第5章 「記憶のナイフ」
車を停めて、マンションを見上げた。


彼が居るのは、最上階の部屋。


言いつけられていた代物は、どんな形であっても手渡して来た。


後は、彼が好きなようにメスを入れるはず。


エレベーターに乗り込んで、けど…と頭の中で独り言を続けた。


あんな小娘のどこが気になるのかしら…?


見るからに男を知りませんって感じは、確かにこれまで彼に近付いて来た女たちにはなかったものかもしれない。


けど、彼が相手にするのは別れ話も金で片がつくような後腐れない女。


あんなの、相手にするなんてーー


健二さんらしくない。
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