Kiss of a shock ~涙と~
何、じゃなくて・・・


陣内は続く言葉を飲み込んでバックミラー越しに健二の顔を見遣った。


見たことのない顔をしている。


少年のような





堕天使のような・・・?


聖者の顔で反面的な心を抱いている―そんなふうに見える。


「万理香ちゃんのこと・・・。」


「ああ、うん。良いんだよ今回はこれで。」


「何か、考えが・・・?」


健二は微笑んでそれから、口を閉ざした。


あの人が誰なのか、知り合いなのか、それとも―


けれどそういうことを聞くのはやめておこう。


陣内はフロントガラスに視線を移し、落ちていく雨の筋を見つめた。
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