Kiss of a shock ~涙と~
足元には、小さな水溜りが出来ていて、まだドレスからも髪からも体からも水滴が滴っている。


ここが、絨毯の上でなくて本当に良かったと思うべきだろう。


と、いうか迷惑だ。


「すみません、私・・・。」


「こっち。」


直人はくるりと背を向けると、廊下を進んでいく。


万理香は慌てて、片方だけになっていたヒールを脱いで玄関を上がった。


「・・・おじゃま、します。」


と、小さく呟いて。


ギシ  ミシ


廊下も傷んでるという感じだ。


一歩進むたびに渇いた音を立てる。


しばらく進むと、直人はガラス戸の前で立ち止まった。


「風呂場はリフォーム済みだから。」


万理香は僅かに苦笑した。


まずかった。


あからさまに、古い家だなという目で見てたから、バレてしまったのではないだろうか―。


「どうも・・・じゃあ、お借りします・・。」


万理香は頭を下げてガラス戸を開けた。


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