Kiss of a shock ~涙と~
シャワー音が聞こえ始めたのを確かめて、脱衣所に入るとバスタオルと着替えを置いた。


女が・・・というか他人がこの家に入るのは初めてだ。


いつもなら、絶対に・・・何があっても入れない。


どんな理由があっても。


らしくない、ことばっかりだ。


はぁとため息をついて、リビングにある古びたソファーにどかりと腰掛けた。


じいちゃん・・・


どんな運命なんだ・・・


健二とは、もう二度と逢う事はないと思っていた。


もう、二度と逢わない・・・逢えないと。


立ち上がり、自分の部屋のふすまを開けて引き出しの一番奥に仕舞っていた箱を取り出した。


躊躇って―、それから箱を開ける。


あの、腕時計がある。





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