Kiss of a shock ~涙と~
「陣内が、そんなふうに動揺するのは珍しいね。」


「からかわないでください。ほら、これを着て。」


「はいはい。」


クローゼットの中から取り出されたジーンズとシャツを受け取って、健二は身にまといながら言った。


「陣内は、誰にも言わないよね。」


「健二さん、あなたの秘密を知りたいだなんて、私は思ってません。言いたくないなら・・・。」


「うん、分かってる。」


そう言って、いたずらに微笑んだ。


健二は、何を考えているのか掴めない男だ。


女はその秘密めいた部分に、惹かれ・・・そして虜になる。


陣内もそのひとり。


もう、離れる事はできない。


服を着て、それからリビングに戻って、二人で朝食をとった。


健二は何も言うことなく、テレビでニュース番組を見て、それから今日のスケジュールを詰めた。


「じゃあ、今日も4時まではスケジュールみっしりだね。」


「そうですね、頑張ってください。」


「うん、けど、それ全部キャンセルして。」


・・・


あまりにも当然のように、普通に言うから何を言われたのか理解できなくて、陣内はしばらく健二を見つめた後、ようやく言った。


「何ですって?」


「うん、だから今日の予定はキャンセルして。」


「・・・本気ですか?」


「何で、本気だよ。今日は陣内に俺の話を聞いてもらう。決めたから。」


陣内は、肩に込めた力を抜いて、ため息を零した。


「分かりました。」
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