Kiss of a shock ~涙と~
その夜は、雨が降っていた。
降り始めた霧雨は、いつしか雨足を増し、窓ガラスを叩いていた。
吹き荒れる自分の心を映すように。
母の心は、もうとうに壊れていたのかもしれない。
自分を省みない夫。
お金があっても、幸福はない。
子供はいても、愛情はない。
ましてや、父には―、ほかに恋人がいたのだ。
それが・・・
それこそが、直人の母。
つまり、健二と直人の母は違う女で、健二は、自分の母の敵の子と仲良く育っていたのだと、知った。
知らぬ間に、自分も母を追い詰めていたのかもしれない。
5歳の自分にも分かる、それほどの半狂乱の手紙の中には、その女を恨む気持ち、その女の子、直人を憎む気持ち・・・そして、自分に対する憤りさえも鮮明に書かれていた。
自分から何もかもを奪い取った、それらを許さない。
死んでも―。
手紙の最後を締めくくる言葉に、健二は震え上がって、手紙を握り締めた。
泣きそうになり、もう一度、恐々と手紙を見遣る。
最後の言葉、最期の文章は、殴り書くようにこう記されていた。
『未来永劫、あなたたちを許さない。』
降り始めた霧雨は、いつしか雨足を増し、窓ガラスを叩いていた。
吹き荒れる自分の心を映すように。
母の心は、もうとうに壊れていたのかもしれない。
自分を省みない夫。
お金があっても、幸福はない。
子供はいても、愛情はない。
ましてや、父には―、ほかに恋人がいたのだ。
それが・・・
それこそが、直人の母。
つまり、健二と直人の母は違う女で、健二は、自分の母の敵の子と仲良く育っていたのだと、知った。
知らぬ間に、自分も母を追い詰めていたのかもしれない。
5歳の自分にも分かる、それほどの半狂乱の手紙の中には、その女を恨む気持ち、その女の子、直人を憎む気持ち・・・そして、自分に対する憤りさえも鮮明に書かれていた。
自分から何もかもを奪い取った、それらを許さない。
死んでも―。
手紙の最後を締めくくる言葉に、健二は震え上がって、手紙を握り締めた。
泣きそうになり、もう一度、恐々と手紙を見遣る。
最後の言葉、最期の文章は、殴り書くようにこう記されていた。
『未来永劫、あなたたちを許さない。』