Kiss of a shock ~涙と~
心配してくれる人がいて、母がいて、友人がいて・・・


自分にないものを全て持っている・・・。


「結局、良いところは全部、お前が持っていくんだ。」


つうと涙が頬を伝う。


雨と混じって、泣いていることが伝わらないように祈った。


直人は、黙ってこちらを向いている。


それは、これ以上健二にかける言葉がない、という意味に感じられて、そうしたら哀しいのか憎らしいのか分からない感情が沸き起こってきた。


くっと喉が鳴ると、泣きながら声を上げて笑っていた。


母さん、母さん・・・


俺は、絶対にフクシュウしてやる。


俺から全てを奪ったこいつに―。


それでも、黙ったままの直人を見遣って、言った。


「また、ダンマリかよ・・・。」


ぜいぜいと息を切らしたじいちゃんが、ようやく追いついて直人の背後で足を止めた。


交互に二人の顔を見遣ると、青い顔で二人の名を呟いた。


「なお、直人、健二・・・。」
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