Kiss of a shock ~涙と~
健二は、小さく肩を震わせて、二人を見据えた。


揺るがない焔が、クツクツと小さい身体の中で煮えたぎる。


ぐっとこぶしを握り締めて、言った。


「お前の、楽しいことも嬉しいことも、全部、奪ってやる・・・。」


青褪めたじいちゃんは、胸を押さえて身をかがめると、それでも健二と直人を不安げに見遣った。


じいちゃんは、健二のことも直人のことも、同じように可愛がり、同じように接してくれていた。


だから、自慢の兄と同じように、大好きな存在だった―。


けど、もう違う。


そうだ、と、健二は自分に言い聞かせて呟いた。


「お前と、俺は―、違う。」


健二はくるりとふたりに背を向けた。


「け、健二!」


祖分の声にも、もう振り返るつもりはなかった。


母さんの言葉だけを頭の中で繰り返しながら、健二は走り出した。


もう、止まらない。


もう、二度と、誰のことも愛さないんだ。


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