Kiss of a shock ~涙と~
唇の中に暖かな欠片が滑り込んできた。


それは、歯列をなぞり、舌を絡め取ると、濡れた音を立てた。


それで、陣内は、「覚醒」した。


目の前に整った顔立ちのそのまつげの長さまで確認できる至近距離の健二の顔があって、むぐっと声を上げて身じろいだ。


ちゅっと、音を立て唇が離れると、健二はふふっと笑って言った。


「大丈夫?」


大丈夫―?それは、こちらの台詞なのかもしれない。


けれど、キスでようやく我に返ったほどに、今回の衝撃は半端じゃない。


健二の今の破綻した性格には、これまでの半生が関わっていることは予想していたけれど―。


まさか、これほどとは、思いもしていなかった。


「もう一回する?」


「いえ、もう大丈夫です。」


即座に返答して、陣内は健二を見遣った。


「くす、こんな陣内は新鮮だな。」
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