Kiss of a shock ~涙と~
―――思い出していた。


懐かしくも、忘れたい記憶の邂逅だ。


健二が泣きながら駆けて行く。


その後姿を雨の中、見送りながら、直人は身動きをとることができなかった。


健二といつか、こうして別れる時が来るのではないかと―、思う気持ちがなかったわけではない。


だが、いつまでも子供のままでいられれば・・・とそう願っていた。


そんなこと、あるわけがないのに。


「俺は・・・悪魔なんだ。」


そう呟くと、じいちゃんは怒鳴って言った。


「何を馬鹿なことを!」


俺は首を振って、俯いた。


濡れた髪が頬にあたり、水滴を滴らせる。


じいちゃんは、俺の前にひざまずいて俯く俺の顔を覗き込んだ。


俺は、馬鹿なんだ。


憎まれているとも、嫌われているとも思わなかった。


そんなこと、欠片も考えもしなかった。


こんな未来、簡単に予想できたのに―。


「何が・・・あったんだ?」


じいちゃんは、声を震わせて問いかけてきた。
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