Kiss of a shock ~涙と~
直人はくしゃくしゃと髪を掻いて立ち上がった。


思い出したって、どうすることもできやしない。


どうして―、逢ってしまったんだろう。


もう二度と、あいつがこの家に来る事なんかない。


けど、本当はこの街にも居てはいけなかったのかもな・・・。


「健二・・・。」


何だって、万理香と一緒に・・・?


万理香に大金を渡したのは、何でなんだ・・・?


なんで、あいつは・・・泣いてたんだ・・・?


聞きたいことが次々と溢れてくる。


けど、馬鹿みたいに一番胸を焦がしているのは、懐かしいという感情だ。


大きくなったあいつの顔に、あいつの姿に、あいつの声に・・・。


それと同じくらいに、胸を締め付けているのは、さっきの万理香の顔だった。


凍りついた、泣き出しそうな顔―。


「俺に、・・・どうしろってんだ。」


どうしろって言うんだ・・・?



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