Kiss of a shock ~涙と~
そう・・・。


何か寂しげで、時折見えるその闇に、自分の面影が重なる―。


「私・・・。」


言いかけて、直人の眼差しが自分を射るように見つめていることに気がついた。


思わず、その冷たさにぞくりと背中に悪寒がはしる。


健二の―、眼差しにも似たその目に、同時に胸がきゅんと痛んだ。


抱きしめてあげたくなるような―


逃げ出したくなるような・・・


「俺が、・・・あんたに似てるって・・・?」


「えっと・・・悪い、意味じゃなくて・・・。」


じりじりと近付いてくる直人に、思わず身が強張る。


直人は、くしゃっと髪を掻いて言った。


「あんたに、優しくしたつもりはないけどな。」


「・・・それは」


万理香は小さく首を振った。


「直人さんは・・・優しいです。」


直人は、ふっと微笑んで苦しげに首をかしげた。
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