Kiss of a shock ~涙と~
「あんたの勘違いだよ」


そう言って、万理香の顎に指先を這わした。


「けど、あんたがそう言うんなら、遠慮なくもらっておこうか。」


万理香の体が硬直するのが分かる。


嘲笑を浮かべて、万理香の目が見開いたのを確かめる前に唇を強引に塞いだ。


逃れようとする身体を強引に抱き寄せて、舌先で唇を割る。


「う・・・」


万理香は呻いて眉をしかめた。


俺が・・・いい奴だって?


そんなわけがないだろう。


優しさは気まぐれだ。


女なんか・・・いくらでもいる。


万理香の目じりに涙が浮かぶ。


ふっと微笑して、唇を離した。


「・・・は・・・」


息さえもできなかったのか、万理香はうっすらと唇を開けたまま、涙ぐんで直人を見上げた。


胸がうずくのは―、馬鹿らしいからだ。
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