Kiss of a shock ~涙と~
インターホンが鳴った。


それで、ふいに自分が、自分の中に戻ってきた。


ピンポーン


ふたたび鳴り響くチャイムの音に、空耳ではなかったのだと確認する。


それから、のっそりと立ち上がりふらつく足によろめいて、テーブルに手をついた。


誰かが尋ねてくるなんて珍しい。


ピンポーン


「はいはい・・・」


小さく呟くと、声は掠れていた。


玄関を開ける前に覗き穴から向こう側の様子を確かめて、一気に現実に引き戻される。


嫌な記憶が打ち寄せる波のように、戻ってきた。


「・・・万理香ちゃん?」


ドアの向こうでその人が先に口を開いた。





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