Kiss of a shock ~涙と~
「煩い女だな。」


そう言って微笑むと、続けた。


「あんたじゃ代わりにはならない。」


手を離すと、陣内は地面に足をつけて頬を擦り呟いた。


「酷いわね。」


「俺が、優しい男だって思ってたのか?」


直人が背を向けて歩き出す。


陣内は後を追いながら言った。


「いいえ、彼の兄ですもの。きっと氷のような心の人だって思ってた。」


・・・


「思ってたとおりの人で嬉しいわ。」


「・・・あんたマゾ?」


「ええ、どちらかって言うと。」


直人は声を上げて小さく笑った。


「本物だな。」


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