Kiss of a shock ~涙と~
健二はどう、思ったのだろうか。


18年も逢っていなかった・・・俺に逢って・・・。


「健二さんは、あなたが自分よりも幸せなんじゃないかって苛立ってるのよ。」


「・・・え。」


陣内は、煙草に火をつけながら言葉を続けた。


「あなたは、次期社長である健二さんよりもはるか後方で不幸に喘いでいる人でなければならなかった。けど、18年ぶりに再会したあなたは健康そうでハンサムで、ひとりの女を雨の中助けに来る、ヒーローみたいな男の人になってた。それが、彼には許せなかったの。」


一気に言い切ると、嘲笑を浮かべて煙草をふかした。


「憎悪って怖いわね。時を重ねる事で、より深みを増す。今では、その澱んだ感情こそが彼の原動力なんだから。」


自分に対する懐かしさや、愛情など、もうその胸にはないと分かっていたはずだ。


それなのに、陣内の口から紡がれた言葉に胸が痛む。


「どうして、逢ってしまったのかしらね。」


そんなこと、俺が聞きたいくらいだ。


ちっと舌打って直人も煙草に火をつけた。


「あんた、ムカつくな。」


「あら、それはごめんなさい。」

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