Kiss of a shock ~涙と~
直人は陣内の顎にかけた手を引いて笑って言った。


「女らしい反応もできるんだな。」


「あ、あなたは思ってたよりも悪い男みたいね。」


「そうだな、自負してる。褒め言葉としてとっとくよ。」


陣内は、唖然と直人を見上げ、それから苦笑して髪をかき上げた。


「分かった、諦めるわ。」


「そう、悪いね。」


悪びた様子はなく、くるりと背を向けて歩き出す。


陣内はその背に言った。


「最後にひとつ質問よ。」


返事はないが、言葉を続ける。


「健二さんに遠慮したんじゃないってことで間違いないわね?」


直人は足を止めずに、ひらひらと手を振り上げた。


ふぅと、ため息をついて直人の背を見送った。


直人は、後悔するだろうー

それとも…

傷つけられた、彼女を見て、あなたははじめて自覚するのかしら…?


「これが、愛なんだってー。」
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