Kiss of a shock ~涙と~
「お帰り陣内。」


「ただいまです。やっぱり来ましたね、義理堅いお嬢さんだこと。」


ふっと微笑み返して健二は立ち上がり、ケーキの入った紙袋に歩み寄った。


「彼女はそういう娘だよ。」


「でも、帰しちゃって本当に良かったんですか?」


「うん、今はね。ああ、ほらやっぱり入ってた。」


健二は紙袋の中からあの時に渡したお金の入った封筒を見つけて言った。


「あらあら。」


「万理香ちゃんらしいな。もう、逢いたくないってとこかな。」


「ふふ・・・」


健二は微笑み返し、箱の中からケーキを取り出すと指でつまみ上げ口に運んだ。


ぺろり、と指先を舐めて呟く。


「狩りの時間、かな?」
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