Kiss of a shock ~涙と~
一人暮らしの万理香の家に、「誰」がいるはずもない。


冷や汗が、シャワーに紛れて全身を駆け巡る。


「・・・大丈夫?」


ふいにかけられたのは女の声で、微かに安堵して、緊張した声で返した。


「はい・・・あの・・・えっと・・・」


誰・・・?


お風呂のドアが少しだけ開いて、隙間からバスタオルが差し出される。


それを会釈して受け取ると、シャワーを止めて濡れた身体に巻きつけた。


どうしようか・・・


そこにいるのが誰なのか、も分からないのに・・・


こんな格好で此処を出て、大丈夫だろうか。


けれど、どうする方法も今はなさそうだ。


万理香はぎゅっと唇を引き結び、扉を開いた。
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