Kiss of a shock ~涙と~
・・・


目の前の女の子はまだ、不審げな眼差しを向けている。


そうか、覚えてない・・・のか。


気を失っていたってわけでもなかったから、忘れたことにしているだけ・・・なんだろうけど、あんなこと、わざわざ思い出させる必要はない。


「あ、自己紹介が遅れたね。私、曜子っていうの、茨木曜子。ここね、すぐ近くなの、私のマンション。えっと、表札はみたんだけど、あなたは、小泉何さん?」


すごく人懐っこい、お姉さん。


そんなふうに思われてるのかな。


警戒心ばりばりって顔で、怪訝そうに私を見返すと、困ったように眉を寄せて言った。


「万理香、です。」


「そう、万理香ちゃんね、可愛い名前ね。」


「・・・どうも。」


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