Kiss of a shock ~涙と~
胸がズキンと痛む。

こんな事態も、本当は想像できた。

けど、上手い具合にことが運べば、あの子を傷つけることも、その傷つけたあの子に健二が愛想をつかすこともできる―、そうすれば、もしかしたら・・・。

あの子のことを諦めてくれるんじゃないかって―。

「申し訳、ございませんでした。」

分かってる。

この人は私のことなんか、これっぽっちも愛してない。

それでも・・・

それでも、私は本気だった。

この人が望むなら、自分も悪魔に魂を売ってもいいとそう思っている。

なのに・・・

あからさまに拒絶されると、行き場のない思いが・・・空しさに胸が締め上げられるのが分かる。

「今日は着いて来なくて良い。」

陣内を置き去りにして健二は家を出ていく。

それを見送って、陣内は静かに、頬に涙をつたわせた。
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