Kiss of a shock ~涙と~
万理香は、嫌悪感をあらわに、足をばたつかせて必死の攻防をこころみた。

「嫌嫌嫌っ!陣内さんは?健二くん、陣内さんと付き合ってるんじゃないの?!」

「くす、やきもちかい?陣内はただの秘書兼愛人だよ。気にすることはない。そんなの、あいつだけじゃなくて沢山いるから。」

「わ、私もその沢山の愛人のうちの一人ってことでしょ、私は私だけを愛してくれる人としかしたくないの、絶対に、絶対にいや!」

「・・・馬鹿な子だな。」

健二は微笑んで、万理香の唇にキスをおとす。

「お前は、今から犯られるんだよ。お前に拒否権なんかない。」

膝を開き、下着の上に指先を沿わせる。

「い・・・嫌ぁぁぁっ!」



ドンドン



突如として、扉を叩く音が響いた。

健二は万理香の首筋をはう唇を離して、ゆっくりと顔を上げた。

「き・・・っ」

悲鳴を上げようとした、万理香の口を大きな手で塞ぐ。

「シー、黙って。酷い事はしたくないからね。」

健二は、柔らかく微笑んだ。

万理香はぶるぶると震えながら、泣いている。

ぞくりと、煽られる。

「待って―」

「おい、いるんだろ!」

健二は、耳を疑った。

あんぐりとして、扉を見遣る。

何だって・・・?

「おい、開けるぞ!」

ガチャっ

開くドアの向こうから、現れたその姿に、健二は言葉を失った。

いるはずのない、救世主。

健二の手が、万理香の口を押さえ込み、組み敷いた万理香は半裸になっている。

捲れ上がったスカートの中に滑り込んだ健二の手。

万理香は「ううう」と小さく唸り、涙で濁ったその人の姿を見つめた。

来てくれた・・・来てくれた!!

「何、やってんだ・・・」

震える声に、健二はハッと我に返り、言った。

「それは、こっちの台詞だよ。何で、お前がここに?」

冷たい汗が額を伝う。
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