Kiss of a shock ~涙と~
直人と健二の間に何があったのか、私には知る由もない

けど、きっと壮絶な何かがあったのだろうと

何も知らなくても容易に想像する事はできた

それほどの悪意・・・

ふいに、体が冷たく感じた。

それと同時に、がくがくと震えていることにも気がついた。

怖かった―

私、怖かったんだ・・・もう、もう駄目かと・・・!

けど、・・・

けど・・・!!!

「大丈夫か?」

万理香は涙ぐんで口元に手のひらをあてたまま呟いた。

「・・・どうして・・・ここに・・・?」

「ああ、曜子から、メールをもらって。」

「え?曜子って・・・!」

あの人・・

「お前が路上で男から襲われてたって聞いて・・・」

じゃあ、あの女の人、直人さんの知り合いだったんだ・・・。

それで、来てくれたの・・・?

でも、どうして・・・

「いつ、いつ帰ってきてたの・・・私、何度も行ったんだよ?直人さんの家に、直人さんに逢いたくて・・・!」

「知ってる」

「知ってるなら、どうして!」

「どうして、お前は俺を嫌いにならないんだよ!」

「えっ・・・?」

「あんなに冷たくお前を突き放して、お前と逢わないようにするためにあっちに行ったってのに、何で、何だって毎日俺の家まで来た?そんなことしてなけりゃ、健二だって・・・」

それは、今まで聞いたことのない直人の声だった。

ああ、はじめて・・・

はじめて直人さんの心を見せてもらった気がする。

そう、思ったら、涙があふれて止まらなくなった。

「仕方ないよ・・・好きなんだもん。それだけ、好きになっちゃったんだもん。どうしても、何を言われても、どんな理由があっても、直人さんが・・・ぐすっ好き・・・」
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