Kiss of a shock ~涙と~
・・・・「抱いてください」

万理香がそう言ってから、直人は呆然と万理香を見下ろしていた。

言われなくても、そのつもり―になっていた、そんな自分に、今更気がついたのと・・・はじめてに違いないのに、強がらせていることに気がついたのとで、硬直しているのだと、気がつくまで。

ああ―

直人は自分自身に嘲笑を浮かべて髪を掻きあげて身体を起こした。

こんなふうに、相手のことも考えずに動くなんて・・・

ふう―と、深くため息をついて額に手をついた。

「あ、あの・・・?」

・・・

「ああ、ごめん。もう、大丈夫だから。」

そう言うのが、精一杯な自分がいる。

身体は、ヤル気になってんだから、仕方がない。

「え、あ、で、でも―。」

背後でうろたえた声で震えているのが分かった。

はじめてで、どうしたら良いのかも分かってないような女に、気を使わせてどうするんだ―。

直人はふっと鼻を鳴らして、万理香を振り向いた。

「悪かった、怖がらせたな―。」

そう言って、頬に手のひらをそわした。

びくりと身を竦める万理香に、ぐわっと身体が欲情する。

まてまて―

自分を律して、とりあえず囁く。

けど、どうにも・・・照れくさい。

「さっき・・、言ったことは・・・嘘じゃないから。」
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