Kiss of a shock ~涙と~
それが、健二の母親と健二との出会いだった。

綺麗な女だった。

その頃には母さんはすっかり弱っていて、もう立ち上がることもままならないほどだった。

父が母さんに会いに来ることはほとんどなくなって、その代わり、その綺麗な女を訪ねてくるようになった。

「子供でも分かったよ。・・母さんは捨てられたんだって。」

ただ、死ぬのを待つだけだった。

母さんも生きる気力なんかなかった。

俺も・・・。

ただ・・・唯一の救いは・・・

健二だった。

あの美しい女は祖父に健二を預けて面倒なんか見なかった。

けど、どんどん大きくなっていくその子供の存在だけが・・・それだけが俺の唯一の楽しみだったんだ。
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