紅色に染まる秘密の恋(休筆中)
すると武内課長は
『…じゃあ、お言葉に甘えて
城咲を宜しく頼むよ。』
と、掴んでいた私の肘をそっと離した。
いつも厳しい表情の課長が
さくらさんに口角を上げている。
やっぱりこんなに綺麗な人だから
表情が柔らかくなるのがわかる気もする。
でも、何だろう…この気持ち。
私は再び心にチクリと痛みを感じた。
『…課長、城咲さんのバッグ持ちます。』
課長に手を差し出した河瀬さんにも
『…悪いな河瀬。宜しく頼む。』
と、私のバッグを渡した課長は
『…俺は仕事に戻る。
河瀬、さくらさん…後は頼む。』
そう言って2人に軽く頭を下げた課長は
踵を返して背を向けると
エレベーターの方へと
早歩きで行ってしまった。
視界から課長の姿が消えると
『…城咲さん…行きましょ。』
さくらさんが私の肩に手を添えて
優しく声をかけてくれた。
私も向きを変えて頷くと
先に歩く河瀬さんに続いて
さくらさんとゆっくり歩き始めた。