はじまりのアリス
「有栖川っ!有栖川話を聞いてくれ!俺たちは……っ」
さらに音は強くなり、ぐるぐると乗り物酔いをしてるかのように目が回る。
……ダメだ。
これじゃ近づけない……!
俺はこの音で身体が潰されてしまう前に美織を抱えて、美術室を逃げるように出た。
耳が痛い。
自分の足がちゃんと地に着いているか分からない。
「潤……。きた。追ってきたよ……!」
美織の言葉に俺は後ろを振り向いた。
死神が足を進めるたびに周りの空間が歪んで。
逃れたはずなのに、その範囲内に入るとまたあの音が襲ってくる。
「一旦離れて考えよう!今はダメだ……この状態じゃアイツに近づけない」
首にかけられた鍵を奪う前に自分の意識が持たないだろう。
音で殺される前に俺は美織を連れて、とにかく死神から離れることにした。