はじまりのアリス
「美織大丈夫か?」
俺たちは死角になっている非常階段の前で止まった。
非常灯の緑の明かりだけがぼんやりと周りを照らしていて、ここなら襲われても上や下に逃げられる。
「ちょっと……ごめん。色々ありすぎて疲れちゃった……」
美織の顔が青くなっていた。
当然だ。
このゲームが始まってから何時間経ったか把握できないけど、時間が進んでいれば朝が来て普通に学校へ登校している時間かもしれない。
そう思ったら俺も疲れを感じてきて、うなだれるように美織とその場に座りこんでしまった。
あの死神。
まさかあんな音で攻撃してくるなんて想像してなかった。
音から感じたのは真っ暗な闇。
そこから悲しみや怒り。嫉妬のような感情が混ざり合い、超音波のようなノイズを発生させていた。
あれじゃ、近づけないし鍵に触れることさえできない。